現在、介護施設では利用者様への様々なケア・サービスを考え取り組まれています。
そのケア・サービスは動物やアロマなど多岐に渡りますが、植物などの園芸を活用しているところもあります。
植物などの園芸は「人の心を癒やす」効果があるとされています。
介護施設では心を癒やすことだけでなく、草・花・野菜・木などの植物と関わることで、心身の健康維持や回復を目的としています。
自然と触れ合うことで心が癒やされ、植物を育てることで楽しみが生まれ意欲となります。
植物を管理するために活動することで健康維持にもなります。そのことが体力や意欲の回復と繋がり、職員にとっても効率が上がることになります。
介護と園芸は一見無関係のように思えますが、上手に活用することで多くの効果があるのです。
新たなケア・サービスを検討している方・利用者様にもっと楽しんでいただく方法を探している方へ、園芸を活用することによって利用者様にどのような効果があるのかをご紹介していきます。
介護職は園芸を活用しよう!
園芸と言っても種類は色々ありますよね。
大きく分けても草花・野菜・果物とありますが、介護施設ではどの種類でも活用できそうです。
介護職が園芸をどのように活用できるのか、3種類に分けて見てみましょう。
・草花
・野菜
・果物
草花
介護施設では、施設の周りに花壇を作っているところもありますね。
花を植えるところから、利用者様が取り組んでいる施設は多くあります。
花壇がない施設では、プランターや鉢に植えられた草花で触れ合うことはできます。
またその他では水耕栽培の植物もありますし、観葉植物などは手軽に室内で育てることができます。
観葉植物の水やりや手入れを利用者様にしてもらうことも良いでしょう。
花瓶に生けた花・アレンジメントして飾っている花を目にするだけでも違います。

私がいた施設でも玄関の生花は欠かしたことがなく、その季節に合った花を飾っていました。
初めは施設のイメージや来客のためとしか思っていませんでしたが、利用者様は私たち以上に周りをよく観察しています。
玄関に見える生花が変わると「お花きれいですね」と言われている利用者様が多くいました。
私はそのような声を聞いて花はただの飾りではなく、利用者様にとって良い刺激となっている存在だということが分かりました。
野菜
草花と同じように、近くに小さな畑を準備し野菜を植えている施設もありますね。
私がいた施設にも施設の裏に小さな畑があり、そこでピーマンやさつまいもなどを育てていました。
野菜の場合は植えるところから管理して収穫する。
そしてそれを味わうことが楽しみですよね。
育っていく過程を利用者様も楽しみながら、草取りなどの作業にも取り組んでいました。
畑のない場合は、ミニトマトやゴーヤなどであればプランターで十分育てることが可能です。
草花と同じように、水やりや手入れを利用者様が担当することもできます。

野菜は収穫の楽しみがあるため、プランターであれば室内でも収穫を体験できますよね。
また収穫したばかりの土や葉の付いた野菜を見るだけでも、新鮮さを感じることはできます。
果物
草花や野菜よりも手軽さの面では難しい果物ですが、いちごやさくらんぼはプランターや鉢でも育てることができますね。
私がいた施設では横に大きな柿の木があり、たくさんの柿が実っていました。
その光景を見ては利用者様から「柿がおいしそう」との声が度々聞こえていました。
その柿をおやつに出すと、外の柿の木を眺めながら喜ばれる方が多くいました。
いちごなどのようにプランターで栽培できるものであれば、野菜と同じように収穫も楽しみですよね。

室内での栽培は運動というほどの活動量はありませんが、育てて収穫するまでの過程で十分に様々な効果が得れることは可能でしょう。
高齢者への様々な効果と効率UPとは?
草花を触ったり鑑賞するだけでも、気分転換になった感覚を経験したことのある方は多いのではないでしょうか。
私も自宅で観葉植物を育てていますが、小さな新しい芽が出てきたり葉が増えていたりすると、嬉しい気持ちになり気分が上がります。
変化を見ることで植物が生きていることを実感できます。
自分の体験からも介護施設で植物などの園芸を活用することで、高齢者の方たちには様々な効果があるのではないでしょうか。
実際に私が携わっている介護研修には、園芸科に所属している学生さんが数名受講されました。
介護に園芸を取り入れて、人のためになる仕事をしたいという思いからだそうです。
では園芸を取り入れることによって、どのような効果があるのでしょうか。
大きく分けて以下の5つの効果が見られます。
- 自発的に活動する
- 運動量が増加する
- コミュニケーションが増える
- 気分転換になる
- 季節を感じる
①自発的に活動する
介護施設にいる利用者様は、自発的に活動する機会がおのずと減ってしまいます。
仕事や育児などで忙しく活動していた方も、環境の変化によって自発性がなくなっていく場合が多いようです。
園芸を取り入れることで、水やりや草取りなどの自発的な活動に繋がるでしょう。
他の利用者様と担当や当番などを決めて活動することにより、自分の存在価値・役割が見つけられるのではないでしょうか。

また自発的に活動する気持ちを日々の生活にも向けてもらうことで、職員も仕事の効率が上がり助かることに繋がります。
実際に利用者様の中には食事の前後にテーブルを拭いたり、お手拭きを配ったりということを自発的にしてくれていた方がいました。
職員がお礼を言うと、いつもうれしそうな笑顔を見せてくれていました。
②運動量が増加する
花壇や畑での活動であれば更に多くの運動量となりますが、植物を育てるために自然と運動量が増えていきます。
機能の低下を防ぐために、私も利用者様と足を上げる運動などをしていましたが、単に運動をするとなると腰が重い利用者様が多くいました。
目的意識を持って取り組み、育っていく過程を見ることがパワーとなり自然と運動量の増加に繋がります。
利用者様の中には以前は自分で出来ていたことが、出来なくなってしまった方もいます。
そのような方の機能が向上することは、職員にとってもうれしいことです。
ご本人で出来ることをしてもらうことで効率も上がります。
そして運動によってストレスも発散されていくことにもなるでしょう。
③コミュニケーションが増える
園芸を通して利用者様同士・職員と利用者様のコミュニケーションが増えるでしょう。
「昨日より大きくなってますね」「花が咲きましたね」など会話をするきっかけとなります。
また水やりなどの作業では、分担して取り組むことでチームワークが生まれます。

仕事の現場から離れた高齢者の方にとって、みんなで協力し合う機会は減っていくことの方が多いでしょう。
協力し合うことで楽しく穏やかな気持ちになれるのではないでしょうか。
利用者様の中には農業をしていた方も何人かいました。
そのような方が土を触ることも初めてという方に、教えてあげることでも良いコミュニケーションとなっていたように思います。
④気分転換になる
介護施設で過ごしている利用者様は、年に数回の野外レクで外出すること以外では、自由に外出することは難しいでしょう。
毎日同じ空間にいると、たまには外の空気を吸いたいと思うのは当然です。
外で太陽に当りながら植物や土を実際に触り、自然と触れ合うことで気分転換になります。
自分たちで世話をし育て、花が咲いたり野菜を収穫したりすることで達成感にもなります。
私たちも仕事で達成感があるとモチベーションが上がりますよね。

そして「どのような花が咲くのか見たい」「収穫した野菜を味わいたい」という目標があることで、意欲を持って過ごせることにもなるでしょう。
⑤季節を感じる
草花・野菜・果物はそれぞれ、タネをまく・花が咲く・収穫する時期がありますよね。
園芸は季節を感じることも楽しみの1つです。
施設の中にいるとどうしても、実際に季節を感じることが難しくなってしまいます。
外に出て外気に触れたり、収穫する物で四季を実感できます。
介護施設では季節に合わせての行事を実施したり、施設内ではその季節に合わせて装飾を変えたりなどの工夫はしています。
しかし実際に自分の肌で体感できることは、利用者様にとって楽しみで価値のある活動となるでしょう。
まとめ
・園芸を取り入れることで高齢者には心身共に維持・向上の効果があります
・視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚である五感が刺激され様々な効果に繋がります
・利用者様の心身維持・向上により職員にとっては仕事の効率も上がります
介護施設に園芸を取り入れて活用することは、意外と簡単で難しいことではありません。
花壇や畑を利用するとなると環境によっては難しいかもしれませんが、プランターでの栽培や観葉植物でも可能であれば取り入れることは簡単です。
また実際に植物や土に触れ合うことが出来なくても、目にすることだけでも効果は期待できます。
園芸を取り入れることで利用者様の五感が刺激され様々な効果に繋がります。
それは、植物を見る視覚・風や外の音を聞く聴覚・花や野菜の香りを嗅ぐ嗅覚・野菜や果物を味わう味覚・土や植物に触れる触覚、といったことです。
このような刺激により利用者様の心身の維持・向上に繋がることとなり、様々な効果が期待されます。
その効果のおかげで、職員にとっては仕事量が軽減され効率UPになるでしょう。
利用者様・職員どちらにとってもメリットが期待できる活動として、今後積極的に取り入れていきたいですね。









