高齢になり介護が必要となってくるとともに、身だしなみがおろそかになってしまう傾向があります。
身だしなみは衛生面で清潔にするだけではなく、高齢者の内面的な部分にも刺激を与え気持ちも変化します。
高齢者は体力面や精神面での衰えを予防するためにも、身だしなみは大切なことです。
介護施設から在宅へ生活を戻すことを目標としている高齢者の方や、介護施設でもできる部分は自立して活動した方が本人のためにもなりますし、職員も仕事の効率UPとなり助かります。
こういったことからも身だしなみを整えることは、自立への第一歩と言えるでしょう。
在宅で介護をされている方・介護職で利用者様へ自立を促したい方に向けて、身だしなみのお手入れ方法やコツをお伝えしていきたいと思います。
高齢者は身だしなみが自立への第一歩!
身だしなみとは、日常生活で相手に対し不快感を与えないよう、容姿・見た目などを整えることです。
清潔感を大切にし接する相手のことを考えた配慮の1つです。
一般的に社会人であれば、職場やその他外に出る機会や人と会う機会があるため、自然と身だしなみに気をつけますよね。

しかし高齢者になり介護が必要となったり、介護施設での生活で外出の機会が減ったり、認知症になると身だしなみへの関心が無くなってしまう場合もあります。
さらに高齢者本人は身なりに関心があっても、自分は周りの人から関心を持たれていないと考え、関心が無くなってしまうこともあります。
介護施設などでは入浴の時間のように計画的に行われることとは違うため、高齢者にとってはおろそかになってしまうことなのかもしれません。
一日の始まりとして身だしなみを整えることは、高齢者の気持ちを前向きにし自立への第一歩にもなります。
髪型をその日の気分によって変えてみたり、ネイルなどのおしゃれをすることで、意欲や気分をリフレッシュすることとしても有効でとても重要なことだと言えます。
では、身だしなみを整えることとして、大きく6つに分類してご紹介します。
- 洗顔
- 目・鼻・耳のお手入れ
- 整髪
- ひげ剃り
- 爪切り
- メイク
①洗顔
タオルや洗顔料など、洗顔の際に必要な物は事前に手元へ揃えておきます。
利用者様が洗面台で顔を洗える場合は、一人で立てる方でも顔を洗う時にバランスを崩してしまうことがあります。
そのような方の場合はイスに座った状態で顔を洗うようにしましょう。
立って洗える方の場合は、洗面台の方へ身体を付けバランスを保てるように気をつけましょう。
洗面台での洗顔が難しい寝たきりの方などの場合は、蒸しタオルを使って顔を拭いていただきましょう。
自分で出来る方には自分で拭いていただき、介助が必要な方には蒸しタオルで上から下へ、額⇒目⇒鼻⇒頬⇒顎の順番に拭いていきましょう。
私の施設でも時間がかかったとしても、できる限り本人にしてもらうよう職員は心がけていました。
②目・鼻・耳のお手入れ
目のお手入れ
目を拭く時は目頭から目尻へ向かって優しく拭き、一度拭いた面を使って拭かないようにしましょう。
目やにが固まって取れづらい場合は、蒸しタオルをしばらく当てて目やにを柔らかくすると拭き取れやすくなります。
鼻のお手入れ
鼻水が出ている場合は先ず鼻をかんでいただき、鼻の周りもきれいに拭きましょう。
利用者様の中には普段から鏡をあまり見ないため、気づいていない場合もあります。
鏡を見ることを習慣付けるようにしていただくと良いかもしれませんね。
鼻水が固まってしまっている場合は、お湯などで湿らせた綿棒でゆっくり回しながら取り除きましょう。
鼻毛が伸びている場合は、先の丸い専用のハサミや電動の鼻毛カッターを使用し安全にカットできるようにしましょう。
耳のお手入れ
高齢者は耳垢が溜まっていることが原因で、耳の聞こえが悪くなっていることがあります。
そのため時々チェックした方が良いでしょう。
実際利用者様の中にも聞こえが悪くなり耳鼻科に行ってみると、耳垢が溜まっていたことがあり耳鼻科できれいにしていただいたことがありました。
耳垢は入浴後が一番取れやすくなるので、入浴後のお手入れを心がけましょう。
乾いている耳垢の場合は耳かきを使用し、湿っている耳垢の場合は綿棒を使用します。
③整髪
髪の毛などが落ちても良いように肩にタオルを掛けましょう。
自分で鏡を見ながら髪をブラッシングしていただきます。
ブラシは出来るだけ軽い物で、持ち手が太い方が腕への負担が減ります。
髪が絡み合って通らない場合は、無理やりブラッシングせずに毛先の方から少しずつ根本へ向かってとかしていったり、ブラシが通りやすくなるヘアスプレーを使用しても良いでしょう。
④ひげ剃り
介護施設では電気シェーバーを使用していただきます。
蒸しタオルを当てて髭を柔らかくしてから、剃るようにしましょう。
肌の弱い方は剃った後にローションなどで保湿をすると良いでしょう。
剃った後に剃り残しがある時は声かけや介助するなどの対応をし、本人が出来ない場合は職員が介助しましょう。
⑤爪切り
高齢になるほど、爪は厚く硬くなり割れやすくなってしまいます。そのため爪切りは、入浴後の爪が柔らかくなっている時に行いましょう。
女性の方は以前からネイルカラーが好きであったり、ネイルを楽しみたいと思っている方もいます。
本人が希望するのであれば爪の状態も見ながら、ネイルカラーを楽しむことも良いでしょう。
私の施設でも普段はしていませんでしたが、野外レクで水族館やお花見などの外出する日はおしゃれの1つとして、女性の利用者様はネイルをしていました。
皆さん自分の手を見ながらとても喜ばれていましたよ。
⑥メイク
洗顔後に基礎的なお肌のお手入れとして、化粧水と乳液・クリームなどでお肌を整えましょう。私の施設では普段メイクをしている利用者様はいませんでしたが、他の施設では普段からメイクをきれいにしている利用者様を見たことがあります。
皆さん見た目も気持ちも明るく若々しく見えました。

私の施設ではネイルと同じく、野外レクの日はメイクもしていました。
自分で出来る利用者様は少なかったのでほとんど職員がメイクをしていましたが、メイクの順番を教えてくれたり口紅の好きな色を伝えてくれるなど、メイクを始めた途端に生き生きと笑顔になる利用者様がほとんどでした。
女性はメイクをすると見た目だけでなく、気持ちも明るくする効果があるのだと分かりました。
お手入れのポイントやコツ!
身だしなみは出来るだけ利用者様本人にしていただくことが、自立への第一歩となります。
そのため利用者様が出来ない部分は、職員が介助することはもちろんなのですが、いかに利用者様へ身だしなみについて関心を持っていただくか、ということも重要となります。
関心を持っていただくポイントとしては、以下の2つが重要となります。
・利用者様本人が出来ることはしていただき無理に押し付けない
・毎日の日課として習慣的に出来るよう工夫する
このようなことを心がけながら、以下ではそれぞれに分けたポイントやコツをお伝えします。
①洗顔
洗面台を使用できる場合は、水道の蛇口の扱いも利用者様にとっては難しいことがあります。
力が必要な蛇口が難しいようであれば、左右に動かすだけで開閉できる、レバーハンドルなどを利用することも良いでしょう。
最近は100円均一で購入できる物もありますよ。

小さなことかもしれませんが、毎日のこととなると使いやすくなければそれが原因で、行動が億劫になってしまいます。
利用者様が快適に簡単に使用できているか、ということを観察しましょう。
洗面台での洗顔が出来ない方の場合は、蒸しタオルで顔を拭いていただきましょう。
その場合の蒸しタオルの作り方をご紹介します。
【電子レンジを使用する場合】
①水で濡らしたタオルを固く絞り、電子レンジで使用できるポリ袋に入れます
②電子レンジで約3分温めます
③やけどに注意しながら取り出し、熱すぎないかを職員が確認します
【電子レンジを使用しない場合】
①洗面器に約50℃〜55℃のお湯を準備します
②タオルの両端だけを持ち、中心部分のみお湯につけます
③そのままタオルを上げて絞ります
②目・鼻・耳のお手入れ
目の周りは特に皮膚が薄いので、目頭や目尻は優しく扱いましょう。
感染防止のためタオルの拭く面を変えながら拭くようにしましょう。
目の周りと同じく、鼻の周りや耳の後ろは皮脂などで汚れが付きやすい部分です。
拭いても汚れが残っている場合は、職員が介助するようにしましょう。
特に耳の後ろは髪の毛に隠れてしまうので、注意して見るようにしていました。
③整髪
私たちにとってブラシで髪を整えることは簡単なことですが、利用者様にとっては手に不自由があると難しい動作です。
ブラシを持った状態が固定できなかったり、頭に手が届かない方もいます。
またドライヤーを使用したい方が両手を使えない場合もあります。
ブラシをしっかり持つことが難しい場合は、ブラシの柄が太い方がしっかり握ることが出来ます。
頭に手が届かない場合は、ブラシの柄が長い物だと使いやすくなります。

そしてドライヤーを両手で使用できない場合は、ドライヤーを固定すると片手でも可能ですし便利です。
ドライヤーは高齢者でなくても重い物がありますよね。
出来るだけ軽い物を使用して、利用者様自身の使い勝手を考えると良いですね。
④ひげ剃り
最近の電気シェーバーは色々な種類の物があります。
性能が良く水洗いも出来るシェーバーなどは、手入れも楽で清潔に保てて良いのではないでしょうか。
毎日のことなので本人が使いやすく、操作が簡単な物の購入を検討してみてはどうでしょう。
介護施設では多くの利用者様が使用しています。
その場合は感染予防のために、各々自分のシェーバーを使用するようにしましょう。
私の施設でも電気シェーバーにはテプラで名前を貼り、本人のシェーバーを職員が準備し感染予防に努めていました。
⑤爪切り
爪切りを利用者様本人がする際は、手元がよく見えなかったり力が入らなかったりと結構大変な作業です。
爪切りは出来るだけ大きめの方が使いやすくなります。
職員が介助する際は痛みがないか声かけをしながら、切りすぎないように気をつけましょう。

高齢者の爪は固く割れやすいため、切る時は少しずつ切るようにしましょう。
足の爪は端を切りすぎると巻き爪になる可能性があるため、両端は角度を付けずに真っ直ぐ切りましょう。
⑥メイク
スキンケアやメイクはできる限り利用者様本人で、鏡を見ながらしていただくことで色々なメリットがあります。
手を使うことを習慣にすることで手の動きも良くなりますし、メイクではリップの色を選んだりという楽しみが生まれます。
女性はスキンケアやメイクをすることで、以前の生活習慣を思い出し元気を取り戻します。
表情も明るくなり意欲の元となるのではないかと思います。
まとめ
・身だしなみを整えること=自立に繋がります
・衛生面・体力面・精神面の向上に役立ちます
・利用者様の自立は介護職員の効率UPにもなります
身だしなみを整えることは、見た目を清潔に保ち相手を不快にさせないことです。
しかし高齢者の方にとっては、毎日の習慣だったことが億劫になってしまいがちです。
それは社会に出る機会が減ってくることや、認知症などで身だしなみへの関心が無くなってしまうことからのようです。
介護施設では外出する機会もあまり無くなってしまいますが、身だしなみを整えることは見た目を良くすることだけではありません。
衛生面や感染防止・体力の維持や向上・精神面の向上など、色々な面に対して効果があります。
身だしなみは自立への第一歩として、できることは本人にやっていただくことが大切です。
できない部分は職員や家族が介助し、毎日の習慣として無理せず取り組めるようにしていきましょう。
介護施設では自立することで、職員の効率UPにもなります。
お伝えしたそれぞれのポイントを把握しスムーズに行うことで、高齢者にとっても身だしなみに対する関心も保てるのではないかと思います。









