少し前の時代は介護職への転職が集中したこともありましたが、ここ数年は未経験から介護職を目指す方は減少傾向にあります。
このことを証明するかのように、福祉関係の専門学校や学科・研修事業は近年規模縮小や研修の廃止へと体制を変えざるを得ない状況になっているのです。
しかしそのような状況の中でも、介護職を目指している方は実際にいます。
介護職は今後さらに必要とされる職業になることは予想できます。
介護職に就きたいという人がさらに増えていって欲しいところですが、そのためには介護職のイメージを良いものにしていく必要があるのかもしれません。
施設自体をより良いものにするためにも、介護職員各々の向上心が大切となります。
介護職を目指している方・既に介護職として働いている方へ、働くうえで大切なことについて詳しくお伝えします。
介護職は向上心が必要!介護職に関する資格
一般的に介護職のイメージを聞くと、良いイメージよりも悪いイメージの方が上回っているように思います。
現在の介護職離れを変えていくには、先ずはイメージの回復が必要なのではないでしょうか。
これから介護職を目指す方が介護の入り口となる資格である「介護職員初任者研修」を修了後に行ったアンケートの中で「受講する前と後では介護に対するイメージは変わりましたか?」という質問にほとんどの受講生が「変わった」と回答しています。
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引用元:http://fukuju.jp/docs/平成29年度第1回初任者研修アンケート.pdf
「イメージはどのように変わりましたか?」という質問には「知識と技術が必要な職業であることが分かった」「良いイメージになった」という回答が多くを占めています。
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引用元:http://fukuju.jp/docs/平成29年度第1回初任者研修アンケート.pdf
上記の結果からも分かるように、受講した後では知識と技術の必要性を感じた受講生が多くいます。
実際に私が講師として教えている受講生たちにも同じようなアンケートをとっていますが、受講前後ではほとんどの受講生が「介護に対するイメージが変わった」と答えています。
イメージが変わったと感じた内容は以下のような感想が多くありました。
・暗いイメージだったが素晴らしい仕事だと思った
・介護職は利用者様を心身共に支えなくてはならない存在だと思った
・専門的な知識や技術を身につけプロとしてやりがいのある仕事だと思った
これに反して介護職で入社する条件として「資格不問」と表記している事業所が最近は多くあります。
これは現在の人員不足の状況から仕方ないことなのかもしれません。
このことから介護未経験の方や介護職について詳しく知らない方からは、資格がなくても出来る仕事・誰にでも出来る仕事というイメージがあるのではないでしょうか。
資格や経験がなくても現場で指導を受け、実際に経験しながら知識や技術を身につける職員はたくさんいるのも現実です。
実際に私が働いていた施設では、無資格のまま5年以上勤続している職員が何人もいました。

しかし介護の入門資格である初任者研修で基礎を学んだ受講生にとっては、思っていた以上に知識や技術が必要で、プロとしての意識を持って取り組む仕事であることが分かったのではないでしょうか。
介護の世界も日々進化しています。介護報酬改訂は3年に1度行われています。
2025年には団塊の世代が75歳以上となることで、国民の約4人に1人が75歳以上の後期高齢者となります。

そのことに向けて1人1人が状態に応じたサービスを適切に受けられるよう、質の高い効率的な介護サービスを提供できるような体制整備を目指しています。
質の高い効率的なサービスを提供するためにも、今後介護職に求められることは知識や技術だと思われます。
そのためには各々が向上心を持って知識や技術を身につけることです。
常にステップアップを目指し、研修への参加や資格取得などに努めることが必要となるでしょう。
では介護職の代表的な資格について見てみましょう。下記のようにステップアップしていきます。
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引用元:https://www.sanko-fukushi.com/branch/osk/chigai/
介護職に関する資格は大きく分けて5種類あります。
それぞれの資格の内容は以下のとおりになります。
自分のレベルや実務経験などに応じて資格取得を目指していきましょう。
・介護職員初任者研修
・実務者研修
・介護福祉士
・認定介護福祉士
・ケアマネジャー
介護職員初任者研修
介護職員初任者研修は、介護の入り口の資格として介護の基礎知識を身につけることができます。この基礎知識の有無には意外と大きく差があります。
それが分かるのは現場での実践の際に使われる専門用語の理解や、介護技術の基本的な技能知識からです。
現在は資格不問という事業所が多くなりましたが、介護職員初任者研修を取得していることは採用の際に有利となるでしょう。
また事業所によっては資格手当がつくこともあります。
これから介護職を目指す方にとってはもちろんですが、既に介護職として働いている方でも資格を持っていない方には、自分の知識や技術を見直すことができます。
取得しておくと現場で役立つことがたくさんあります。
実際に介護職として働きながら受講していた受講生からは、以下のような感想が多くありました。
・自分が正しいと思っていたやり方が実は間違っていたことが分かった
・介護は初めてで不安だったが受講したことで前向きに取り組みたいと思った
このような声が多く聞かれることからも、介護職では先ず取得してほしい資格だと思います。
実務者研修
実務者研修は、レベル的には上記図のとおり介護職員初任者研修のすぐ上にあたる資格となります。
国家資格である介護福祉士を目指すのであれば、実務者研修の取得は必須条件となります。
こちらも介護職員初任者研修と同じく資格手当がつくこともあります。
実務者研修を取得することで知識・技術が身につくことと同時にサービス提供責任者として従事することができます。
このサービス提供責任者とは略して「サ責」と呼ばれ、訪問介護事業所で利用者様が質の高いサービスを受けれるようサポートする仕事です。

訪問介護に従事するヘルパーと利用者様の調整や訪問介護計画書の作成、ケアマネジャーとの連携も行うなど多岐に渡っています。
その訪問介護事業所での要となる存在です。
さらに実務者研修の内容で特徴的なのが、喀痰吸引や経管栄養などの医療的ケアの技術を身につけることができます。
働いている施設で喀痰吸引や経管栄養を必要とする利用者様がいる場合は、この技術を持っている職員は特に必要とされる存在です。
医療的ケアの技術を身につけることで仕事の幅が広がります。
私が働いていた施設でも夜勤者には喀痰吸引は必須で、採用の際も重要視されていた点でもあります。
このような技術を身につけることで、仕事に対するやりがいや責任感にも繋がると思います。
介護福祉士
介護福祉士は、初任者研修・実務者研修とは違って民間の資格ではなく国家資格となります。
介護職を続けるにあたり目指したい上位の資格です。介護福祉士は資格手当のつく事業所が多いようです。
私の家族が施設に入所するとしたら、無資格の職員の方よりもやはり何かしらの資格を持っている方だと安心すると思います。
介護福祉士であれば、それなりの知識と経験が必要になるので家族としては、安心できる1つのきっかけにはなりそうです。
福祉系の学校から受験するルート以外では、実務者研修の取得と実務経験が3年以上という2つの条件が、受験の際は必須となります。
試験は年に1度開催され介護職の資格では難易度は少し高めとなります。2020年度の介護福祉士国家試験での合格率は69.9%です。
認定介護福祉士
認定介護福祉士は、介護福祉士よりさらに上の民間の資格となります。
介護サービスの種類を問わず、質の高い介護サービスのマネジメントや医療と介護の連携、地域包括などに対応する知識・技術を身につける資格となります。
受験資格として介護福祉士の実務経験が5年以上必要となります。
現場でリーダーへの指導にあたったり、研修での講師をする方などが取得している資格です。
介護福祉士より更に上の専門的な知識と高い技術を持っていることから、転職ではかなり有利となるでしょう。
ケアマネジャー
ケアマネジャーは、略して「ケアマネ」と呼ばれ介護保険に基づいて、介護を必要とする方の心身状態や環境を考えて介護サービスを利用できるように、ケアプランを作成することが主な仕事となります。
多岐に渡る介護サービスの中からその利用者様に合った介護サービスを選び、利用者様やその家族へ提案し様々な相談を受けることも多くあります。
利用者様と介護事業所の間でそれぞれの要望や意見を伝えることもあり、コミュニケーション能力がかなり必要となります。
私が働いていた施設にもケアマネの方がいましたが、利用者様に関わる全ての方との間に立って無くてはならない存在です。
私の想像以上に利用者様はケアマネの方を頼りにしており、家族よりもケアマネの方の言うことなら納得される利用者様も多くいました。
多岐にわたる気遣いが必要で、個人的には経験しながら成長していく仕事というイメージがあります。
ケアマネジャーも国家資格となり難易度はかなり高くなっています。2019年度のケアマネジャー国家試験での合格率は18.5%と狭き門になっています。
介護職として大切なこと5選
介護職として仕事をする上で以下のことを意識しながら取り組むことが大切となります。
特に大切とされること5選についてそれぞれ見ていきましょう。
①思いやり
②責任感
③気づき
④尊厳の大切さ
⑤コミュニケーション
思いやり
介護職は利用者様に対して常に思いやりの気持ちで接することが大切です。
利用者様の気持ちを察して、その場その状況に応じて利用者様が毎日を穏やかに過ごせるよう、気遣うことが必要とされます。
現場では利用者様に思いやりを持って接することで直接「ありがとう」と言われ感謝される場面が多くあります。
食事の配膳をした時・口腔ケアの時・お茶やおやつの時・トイレ誘導の時・オムツ交換の時など、こちらが当たり前に仕事としてしていることでも、利用者様は思っている以上に喜んでくれ度々「ありがとう」と言ってくれます。
「お礼なんていいですよ」と言いたくなる時もありましたが、これもコミュニケーションの1つになっているのかもしれませんね。

このような日常的なことでも、この仕事をやっていて良かったと実感することのできる職業です。
利用者様が喜んでくれることでやる気も出てくるきっかけとなるのではないでしょうか。
責任感
介護職は人の命に関わる仕事です。
介護職には医療的行為は出来ませんが、常に命と関わっている現場であることに違いありません。
1人1人が責任感を持って仕事に取り組むことは、事故を防ぐためにも大切なことです。
1つの小さなことが生命に繋がることにもなりかねません。
また責任感を持って接することで、周りの職員や利用者様からの信頼を得ることにもなります。
毎日ケアするうえで利用者様やその家族との間の信頼関係はとても重要なことです。
利用者様だけでなくその家族・周りの職員の信頼を得るためにも、責任感をもって取り組むことは結果自分のためにもなることだと思います。
気づき
利用者様の中には認知症の方も多くいます。
自宅に帰りたいと施設から出て行こうとする方がいたり、歩行が困難で転倒の可能性のある方が一人で歩こうとしていたり、飲み込みが悪く食事の際に食べ物が詰まってしまう危険があるなど、注意の必要なことがたくさんです。
常に周りに目を配り状況を把握しておくことで、事故を事前に防ぐことにも繋がります。
常に気づきを心がけることで、利用者様の命を守ることにもなるのです。
私が接した利用者様の中には、してほしいことがあっても遠慮してしまい職員に言えない方がいました。
利用者様も各々性格が違いこちらの気づきが必要な方もいるということが分かりました。
尊厳の大切さ
利用者様はほとんどが70代以上の方が多く、みなさん人生の先輩でもあります。
たとえ高齢者でなくても、対等な関係を心がけ築くことは大切です。
言葉づかいや接し方など、利用者様の尊厳を守ることを意識しながら対応しましょう。
特におむつ交換などの際は、高齢者・認知症だからといって羞恥心がない訳でもありませんし、人として気遣う気持ちは大切です。
利用者様の中には、申し訳ないという気持ちを持っている方もいます。
そのような気持ちを察して人としての尊厳を守る対応をしましょう。
コミュニケーション
介護職の現場は業務に追われ忙しい日々ではありますが、利用者様との会話は常に心がけコミュニケーションをはかることは大切です。
利用者様は1人1人性格も考えも違いますが、その方の性格に合わせ寄り添った対応ができるようにしましょう。
コミュニケーションをとることで、お互いに分かり合え良好な関係となることができます。信頼感や安心感を持ってもらうためには、毎日の関係がとても大切です。
より良いサービスを提供し利用者様が楽しく毎日を送れるような環境を作るためにも、職員自体が利用者様との関わりを楽しみながら笑顔で接することです。

私は常にコミュニケーションを心がけて利用者様と接していました。
利用者様に限らず誰かと話していると自然と笑顔になるものです。
そして利用者様は笑顔で対応する人を頼りにします。誰でも暗い表情で話しもしてくれない人には声をかけづらいと思いますよね。
認知症の方にも気持ちは十分伝わります。
自分たちが楽しく取り組むことで、利用者様たちも穏やかな気持ちで過ごせるのではないでしょうか。
まとめ
・向上心=介護職員のステップアップ→資格取得などです
・向上心により悪いイメージの払拭・良質な介護サービス提供に繋がります
・介護職の大切なこと=基本は「思いやり」です
介護職の世間のイメージを変えることや、質の高い効率的な介護サービスを提供するためには、介護職各々の向上心が必要となります。
向上心を持ち研修への参加や資格取得を目指すなど、ステップアップをはかることが大切です。
介護職に関する資格は多くありますが、自分の現在の知識や状況に合わせて先ずは行動にうつすことで、介護業界自体の様々な面への向上に繋がります。
介護職として大切なことはたくさんありますが、色々な角度から見ても結局基本となる部分は「思いやり」ということではないでしょうか。
人との関わりが深く大切とされる介護職は、思いやりの気持ちで取り組むことにより自身もやりがいを感じられる職業です。









