介護職の資格は様々なものがありますが、その中でも介護の入り口の資格である介護職員初任者研修。介護の基礎的な知識や技術を学ぶことができる資格とされています。
これから介護職を目指す方・既に介護施設などで介護職として働いているが、知識や技術を身につけたい方・資格を取得したい方など、幅広い人が受講できる資格です。
ではそのような方々へ、介護職員初任者研修は具体的に何を学ぶことができるのか?科目や内容についてご紹介します。
また介護職員初任者研修を取得することでどのようなメリットがあるのか、実際に研修講師として携わっている私がお伝えしていきます。
介護職員初任者研修で学べること!
これから介護職を目指す人にとっては、どのような内容を学ぶのか全く未知の世界といった感じですよね。
この資格は介護施設などで利用者様の介助をするにあたって、様々な面からの介護に関する知識や、安全に適切な介助をするための技術を学ぶための内容となっています。
では受講する科目から見ていきましょう。
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引用元:https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000331389.pdf
【各科目の内容】
①職務の理解
介護に関する様々な職種やサービスの内容・各施設の種類、職務内容について学びます。
介護の現場は様々な職種・施設によって、成り立っていることを知ることが出来ます。
②介護における尊厳の保持・自立支援
利用者様に対しての尊厳の大切さや、利用者様それぞれの状態に合わせた自立支援について学びます。
③介護の基本
介護職に必要とされる専門性・介護に携わる人のモラルや道徳についてや他職種との連携、また感染や事故など注意が必要とされることに対するリスク管理、介護の基本について学びます。

④介護・福祉サービスの理解と医療との連携
介護保険制度・障害者総合支援制度・その他の制度についてや、介護と医療やリハビリテーションとの連携について学びます。
介護・福祉には多くの制度があり利用・活用できることが分かります。
⑤介護におけるコミュニケーション技術
介護職員と利用者様・利用者様家族とのコミュニケーションについてや、介護職員のチームでのコミュニケーション、それぞれの重要性を学びます。
⑥老化の理解
老化によって起こる心とからだの変化や疾病、そのことにより影響を及ぼす日常について学びます。
自分の家族に置き換えて考えることのできる内容ではないでしょうか。

⑦認知症の理解
認知症に対する基礎知識や認知症によって変化する心とからだの変化・日常生活、周りの家族に対する支援について学びます。
厚労省の推計によると、2025年には認知症患者は700万人前後に達し65歳以上の約5人に1人を占める見込みだと言われています。
このことから、今後更に知識の必要性と重要性が求められる内容だと思います。
⑧障害の理解
障害の生活障害・心理や行動の特徴などの基礎的な知識、本人やその家族の心理・支援について学びます。
心理や支援を学ぶことによって、障害に対して様々な角度からの理解が身につくのではないでしょうか。
⑨こころとからだのしくみと生活支援技術
介護に関するこころやからだの基礎的なしくみや福祉用具について、介護で必要される技術として「移乗・移動」「食事介助」「入浴介助」「整容」「排泄」を実際に実技演習として学びます。

私が携わっている介護職員初任者研修ではこの実技演習が、受講生の方たちにとって大変興味深い内容となっているようです。
講師によって各技術の手本を、実際に自分たちの身体を使って教わることができます。
この実技演習では基本的な技術から応用的な技術まで、現場で役立つ正しく安全な技術やコツを身につけることができます。
⑩振り返り
この研修についての全体的な復習や、介護職員初任者研修取得後の研修やステップアップについて学びます。
介護職員初任者研修を取得した後もステップアップしていくことが介護職には大切です。
【修了試験】
そして上記①〜⑩の受講終了後、修了試験として筆記試験が実施されます。
介護職員初任者研修は民間の資格となるため、修了試験は各事業所で作成された内容となります。
そのため難易度は比較的易しい内容となっていることが多いでしょう。
【施設実習】
その後、以下のような各施設での実習を各1日ずつ計3日間行います。
(注:実施の順序は各研修事業所によって前後があります)
・訪問介護サービスなどの「同行訪問実習」
・グループホームなどの「施設サービス実習」
・デイサービスなどの「在宅サービス提供現場見学」

実際に私が携わっている研修の受講生へ、実習を受けた感想を聞いたところ以下のような色々なことが聞けました。
【実習生の感想】
・認知症の方と初めて接することができ良い経験ができた
・介護施設に入ったことがなかったので雰囲気を実感できた
・緊張していたが優しく教えてもらえ楽しかった
・介護士さんたちのプロ意識の高さを感じた
・利用者様とのコミュニケーションが難しかった
・状態の違う利用者様がいる中での対応の難しさを感じた
・利用者様から話しかけてくれて嬉しかった
・帰り際利用者様に「がんばってね」と言われ涙が出た
それぞれの施設で1日6時間〜8時間程の時間ですが、実際に現場に入って経験ができる実習は受講生にとっては大変貴重な経験です。
実習前は緊張していた受講生も実習後は「楽しかった」という声が多くあります。
この実習での経験を機会に、これから介護施設などへ就職を考えている受講生は、自分がどのような施設に合っているか・やっていけそうか、ということを判断する材料としています。
以上の講義・施設実習の全日程出席と修了試験の合格を経て資格取得となります。
取得できるまでに要する期間は各事業所によって違いはありますが、約2ヶ月〜4ヶ月程度で取得できる事業所が多いです。
取得することで得られるメリット6つ
介護職員初任者研修を取得することで得られるメリットは、以下の6つがあります。
①介護施設などへの就職に有利
②現場での実践に役立つ
③職場での信頼感を得れる
④仕事の幅が広がる
⑤事業所によっては手当がつく
⑥自分の知識や技術の見直しができる
①介護施設などへの就職に有利
最近の介護施設などの求人票では資格不問ということをよく目にします。
しかし現場での経験がなくても介護の基礎的な知識・技術を理解している方が、就職の際には有利となるでしょう。
また施設などで働きながら受講する方も実際に多くいます。
無資格の場合は面接の際に、研修を受講したい意思を伝えることも意欲のアピールとなるのではないかと思います。
②現場での実践に役立つ
介護現場では医療現場と同じように専門用語も多くあり、職員間でも申し送りなどでは専門用語が普通に使われています。
基礎的な知識を学んでいることが役立つことになるでしょう。
また技術面は現場での経験がなくても、人員不足の現場では即戦力として活躍できると思います。
実際受講生の中には「移乗の技術を教わった翌日に現場での実践で役立ち、上手く出来て嬉しかった」との声がありました。
介護技術は施設によりそれぞれのやり方があり、研修で教わった基本的なこととは多少違う部分があったり、指導者によってもやり方は様々なことがあります。
しかし基本的なことを学び理解している上で、それぞれの施設や自分に合った方法で応用していけば良いでしょう。
③職場での信頼感を得れる
特に利用者様の家族にとっては無資格者よりも有資格者である方が、安心して家族をお願いできる気持ちになるでしょう。
私がいた施設の利用者様家族と会話をした際「介護職は資格がないと出来ない仕事だと思っていた」という言葉を何度か聞いたことがあります。
そのような言葉を聞くと資格を持っているということで、利用者様家族からの信頼を得れるのではないかと思います。
また職場の中でも、資格取得がやる気や向上心を表し、周りから仕事を任せられる存在にもなるでしょう。
④仕事の幅が広がる
介護・福祉の施設には様々な種類の事業所があります。
介護職員初任者研修では認知症や障害・医療など、専門的な内容を学べることができます。
そのため働く職場の選択肢が広がります。
【働くことのできる職場】
・介護老人保健施設
・介護医療院
・特別養護老人ホーム
・サービス付き高齢者向け住宅
・ケアハウス
・有料老人ホーム
・グループホーム
・通所介護事業所
・小規模多機能型居宅介護施設 などなど
上記のように介護系の施設は主なものだけでも多くの施設があり、それぞれの特徴により自分に合った職場を選ぶことができるでしょう。
⑤事業所によっては手当がつく
介護職員初任者研修を取得していることにより、事業所にもよりますが手当がつくこともあります。

私のいた施設では資格手当として毎月1,500円が支給されていました。
月に1,500円ですが年間で考えると18,000円にもなるので、知識や技術を身につけることができる上に手当がつくなら取得しておいた方が良いと考える人も多いでしょう。
⑥自分の知識や技術の見直しができる
既に介護職として働いている人にとっては、知識や技術の見直しができるきっかけとなるでしょう。
認知症の方への接し方や考え方、職場での連携の大切さや各専門的な知識についても、現場で自然と入ってきた知識だけでは正確ではないことや不足している部分があるのではないかと思います。
また技術面に関しては現場での実践で身につけ当たり前にしていたことが、実は間違っていたり効率の悪いやり方でしていたりということもあるでしょう。
受講することによって、自分の知識レベルを再確認し見直すことができます。
まとめ
・介護職員初任者研修は介護の基本的な知識・技術に役立つ資格です
・取得することで信頼を得ることができ仕事の幅も広がります
・自分の自信に繋がります
介護の入り口の資格といわれる介護職員初任者研修。
介護職を目指している人・既に介護職として働いている人にとって、介護の基本的な知識・技術を身につけるため取得してほしい資格の1つです。
ステップアップとして介護職員初任者研修の上にも様々な資格がありますが、先ずは基礎の知識を習得してからの方がスムーズにステップアップしていけるでしょう。
資格を取得することによって、周りからの信頼を得ることができ仕事の幅も広がります。
それによって自分の自信にも繋がるでしょう。
そして何よりも利用者様へ良い介護サービスを提供できることにもなります。
自分の意識向上とステップアップ・職場の良い環境作り・利用者様や利用者様の家族のためにも、取得する意味が十分にある資格と言えますね。









